刑事事件(覚せい剤・大麻等)

薬物事件で逮捕されたら

覚せい剤や大麻(まとめて「薬物」といいます。)は、使用も所持も法律で禁止されています。
ただ、興味本位や誘われたりして使用してしまう場合があります。
一度の使用でも、逮捕されたり、前科がついたりして人生に重大な影響を与えることがあります。

このページでは、薬物事件で逮捕や捜査されている場合の対応方法や、刑事手続きの流れを紹介します。

薬物事件の刑事手続きの流れ

①逮捕~勾留(最大2日+20日)
逮捕されると、検察庁や裁判所での手続きを経て勾留という手続きに移行します。
逮捕と勾留は厳密には別の手続きですが、合わせて最大で22日間身柄拘束される可能性があると知っていれば大丈夫です。
この期間を利用して警察で捜査や取調べがされます。
捜査が終わると検察官が起訴をします。
②拘置所に移動or保釈
起訴されると捜査の必要がなくなったので、裁判を待つ間拘置所に移動して身柄拘束されます。拘置所は、大阪の場合には福島区にあります。

また、この段階になれば保釈が可能になります。
保釈とは、裁判所にお金を預ける代わりに身柄を釈放される手続です。
この預けたお金は保釈金と呼び、薬物事件の初犯の場合には150万円というケースが多いです(あくまでも事案によって異なります。)。
③公判
起訴されてから1~2か月くらいで、裁判期日が開かれます。
この1~2か月の間で、弁護人が証拠を確認して、依頼者と相談しながら防御の準備をしていきます。
薬物事件の場合には、ほとんどは1回の公判期日で終了します。
④判決
公判期日が終わった後、1~2週間で判決が出ます。
⑤判決に従った手続き
判決が出るとそれにしたがって手続きがされます。
・実刑判決の場合にはそのまま収監されます
・執行猶予判決や無罪判決の場合には、釈放されます
 ただし、荷物などが拘置所になる場合には一度拘置所に行ってから釈放されることになります。
刑事裁判の流れ

このように、薬物事件で逮捕されると、通常は3か月程度身柄拘束をされることになります。
一方で、保釈を行った場合には10~20日程度で釈放が可能になります。

薬物事件の量刑相場

薬物の種類によって法定刑は異なりますが、覚せい剤の場合には次のように定められています。

覚醒剤取締法第41条の3
次の各号の一に該当する者は、十年以下の懲役に処する。 
一  第十九条(使用の禁止)の規定に違反した者 
二  第二十条第二項又は第三項(他人の診療以外の目的でする施用等の制限又は中毒の緩和若しくは治療のための施用等の制限)の規定に違反した者 
三  第三十条の六(輸入及び輸出の制限及び禁止)の規定に違反した者 
四  第三十条の八(製造の禁止)の規定に違反した者
覚せい剤の法定刑

難しい書き方ですが、要は最大で懲役10年となります。
(刑法改正により「拘禁刑」となります。)
もちろんこれは最大の場合ですので実際の相場感としては次のようなケースが多いです。

初犯の場合
懲役3年程度(ただし、執行猶予5年程度)
前科がある場合
懲役3~5年程度
薬物事件の量刑相場

執行猶予というのは、一度釈放されて社会で生活し、執行猶予期間中に犯罪を犯さなければ、刑を受けなくなるというものです。
例えば、「懲役3年、執行猶予5年」であれば、5年間犯罪を犯さなければ刑を受けませんが、途中で犯罪を犯してしまうと3年の懲役を受けることになります。

なお、執行猶予がつかない判決を、一般に「実刑判決」と呼んでいます。
また、量刑はあくまでもケースによってことなるため、適切な防御を行わなければ相場よりも重い判決になる場合もあります。

薬物事件での防御方法

薬物事件では、実際に所持している物品や、尿から薬物反応が出て起訴される場合が多いです。
このため、ここでは実際に所持や使用をしていた場合の防御について解説します。

薬物事件の量刑において、裁判官が気にするのは「再度使用する可能性(再犯のおそれ)」があるかどうかです。
再犯のおそれを感じさせる事情としては次のようなものが挙げられます。

反省していない
「運悪く捕まった」「そそのかされただけ」「悪い事ではない」など、被告人の反省が感じられない場合には、すぐに再使用するのではないかと疑われます。
少なくても、法廷で反省の言葉くらいは述べる必要があります。
何度も使用している、長期間使用している
使用回数や期間が長い場合、薬物を求める体になっている(依存度が強い)と考えられるため、我慢できずに再使用するのではないかと疑われます。
初犯であっても、たまたま見つからず依存度が強くなっている場合があります。
再犯である
以前に薬物事件で判決を受けたのに、再度使用したような場合にも、当然再使用の可能性が高いと疑われます。
再犯のおそれが強くなる理由

ではこれらの事情があっても再犯のおそれが小さいと認めてもらうためにはどうすればいいでしょうか?

まず、裁判所としては法廷で「止めます。」と言っただけでは信用しません。(もちろん言う必要はあります。)
そこで、具体的に薬物と決別するための準備をしたり計画を立てる必要があります。

買えない状況を作る
一般人はどこでどうやれば薬物を買えるかを知らないので、簡単には薬物を使用できません。
しかし、一度使用した人は買い方を知っているため、簡単に薬物を入手できます。このため、簡単に再犯をできてしまいます。
そこで、帰る場所に近づかない、親族に生活見てもらうなど簡単に薬物を買えない状況を作る必要があります。
脱却の支援団体を頼る
薬物は依存性が強いため、簡単には止められません。
そこで、依存から脱却するためのサポートを行っている団体があるため、そこに連絡をしてサポートを受けることが考えられます。
法廷で「受ける予定」と語るだけではなく、実際にサポートの手続きを開始しておき、準備状況を裁判所に提出する必要があります。
親族、職場などのサポートを受ける
薬物の使用は、「寂しさ」が原因になっている場合があります。
そこで、社会とつながっていることを示すため、親族、友人、職場との関係性を維持してサポートを受けられる状況を作ることが必要になります。
再犯のおそれを下げる方法

保釈手続きの重要性

上記のように、薬物事件で逮捕されると3か月程度身柄拘束をされる場合があります。
これだけの長期間社会と離れていると、交友関係を失ったり、仕事を解雇されたりするリスクがあります。そのことは、社会との関係性がなくなる原因であり、再犯のおそれを高めてしまったり、再出発が困難になる原因となります。

そこで、起訴された後はできるだけ早く保釈手続きを行うことが望ましいと言えます。
(なお、寺岡法律事務所では逮捕されている場合には、保釈金を預かる代わりに着手金を0とする運用を行っています。)

実際の事例

ケース1 50代男性(初犯)
覚せい剤の使用・所持で逮捕され起訴された事案。

ご家族の協力の元、保釈申請を行い認容されました。
警察署で会った時は60代にも見える疲れを感じさせる顔立ちでしたが、保釈後は力強い顔立ちで40代にも見えました。

保釈のおかげで、10日程度の身柄拘束で済んだため、一部を除いて職場の同僚などに知られることもなく、支障なく職場復帰をすることができました。
判決は執行猶予となり、現在の就業を続けています。
ケース2 40代男性(再犯)
覚せい剤の使用・所持で逮捕され起訴された事案。以前に覚せい剤の前科あり。

失業中であり、精神的な苦しさから覚せい剤を使用してしまった事案でした。
保釈申請を行い認容され、直ちに就職活動を開始していただきました。
公判時点では就職は決まっていなかったものの、実際に就職活動をしていること、家族を養わないといけないので再犯して刑務所入ることはないと信用できることなどを認められ、執行猶予を獲得できました。
実際の事例

あくまでも寺岡法律事務所で扱った事例ですので、全てのケースに当てはまるわけではない点はご了承ください。

判決後の生活の観点からも、防御の観点からも、できるだけ早期に保釈を獲得して身柄の解放を得ることが重要であることが分かります。

弁護士に相談するメリット

弁護士に相談依頼するメリットとしては次のものがあります。

取調べ対応のサポート
取調べでは話してよいものと、話すべきではないものがあります。
専門の弁護士に依頼することでこれらについてアドバイスを得ることができます。
不安の解消
逮捕されている場合には取調官としか話さないため、わずか10日の拘束であってもとても不安で孤独になります。
この不安や孤独感を解消することも弁護人の重要な仕事であると考えています
保釈手続
保釈手続は弁護人を通じて行います。
あらかじめ依頼しておいていただくことで、保釈が可能になってから早期に保釈手続を行い身柄解放を行うことができます。
国選弁護との違い
国選弁護は国が選任した弁護士がつくため、弁護士を選べません。刑事に力を入れていない先生や、保釈に消極的な先生もいます。
自ら弁護人を選任していただくことで、専門性の高い弁護士や保釈手続に強い弁護士に依頼することができます。
弁護士に相談するメリット

依頼の流れ

逮捕されず捜査されている場合
電話や左メニューのお問い合わせフォームからご連絡ください。
電話、ZOOM、来所での面談を経てご依頼手続を行います。
逮捕されている場合
ご家族などから、電話や左メニューのお問い合わせフォームからご連絡ください。
電話、ZOOM、来所での面談を経てご依頼手続を行います。
事情によっては、面談前に本人に会いに行くことも可能です。
依頼の流れ