放火事件の裁判について
「殺すつもりはなかった、と言えば殺人にならないのですか?」
という質問を受けることがあります。
回答としては、半分は正しい、半分は間違いということになります。
殺意の認定
まず、殺意がなければ殺人罪は成立しません。
しかし、「殺すつもりがない。」とだけ言えば殺意が否定されるわけではありません。
裁判ではいろいろな事実関係を考慮して殺意の認定がされます。
現に人がいる建物にガソリンなどを巻いて火をつけていれば殺意が認定される可能性が高いでしょう。
殺意がなくても
むしろ、刑や罪の重さという意味では殺意の認定がされなくても違いはありません。
殺人罪の刑は次のようになっています。
死刑又は無期若しくは五年以上の懲役(拘禁)
一方で現住建造物等放火の刑も次のようになっています。
死刑又は無期若しくは五年以上の懲役(拘禁)
つまり、刑罰という意味では、殺人罪でも現住建造物等放火でも変わらないということになります。
ここで注意してほしいのが、普段人が住んでいる建物に放火すれば現住建造物等放火が成立することです。
例えば、建物の中を確認して誰もいないことを確認してから火をつけた場合でも、普段人が住んでいれば現住建造物等放火が成立します。
言い方を変えると、「絶対に人が死なない」状況で放火をしても殺人と同じ重さということになります。
「殺意がなければ殺人にならない。」というよりも、
「殺意がなくても殺人と同じ」重い罪というイメージが正しいでしょう。