近年,会社と従業員との関係を雇用契約から業務委託契約に変更し,従業員を個人事業主に変更するケース企業が増えています。
雇用ではなく業務委託契約にした場合には,企業にとっては社会保険料等の人件費を圧縮でき,従業員にとっても自由な働き方をできるメリットがあるとされます。
しかし,雇用と業務委託は法的性質が全く異なり,適切な法的検討をせずに安易に業務委託契約に転換させた場合には,デメリットやリスクだけを抱え込むことになってしまいます。
1 雇用契約と業務委託契約の違い
雇用契約は,使用者の「指揮監督」の下で仕事を行わせ,それに対して報酬(賃金)支払う契約です。報酬は仕事を行った時間(勤務時間)によって決まり,仕事の成果が悪かったからといって報酬を減額することはできません。
業務委託契約は,請負契約であり(委任契約の場合もあり),仕事の完成に対して報酬を支払う契約です。仕事の完成に対して報酬を支払うため,仕事が完成しない場合には報酬が発生しません(委任契約の場合には完成しなくても報酬支払い義務が生じます。)。
一方で,委託者が業務の進め方を指示(指揮監督)することはできません。
2 業務委託契約とすることによるメリットとリスク
業務委託契約の場合には,労働契約と異なり残業などの概念がなく,業務時間が増えても報酬額が増えません。また,社会保険料等の負担を回避することができます。このため,人件費を圧縮できるとされます。
他方で,業務委託では受託者に対して指揮監督をできません。
さらに,事実上指揮監督を行っているなどの場合には,裁判で「業務委託ではなく労働契約である。」と認定されることがあります。その場合には,残業代などを未払賃金であるとして請求されることになり,その金額も高額になりやすいというリスクがあります。
労働契約を業務委託契約に転換する制度を導入する場合には,慎重な法的検討を経るようにして下さい。