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中小企業の法務の実情
多くの中小企業では法務は後回しになっています。
その原因は人員、資金、知識などのリソース不足と言われています。
しかし、実際には「何をすればいいのか分からない。」「何を頼めばいいのかもわからない。」というのが正確でしょう。
このため、「手遅れになってから相談に来る。」という事態が発生します。
そこで、「何をするか。」「何を頼むか。」を整理するために、社内の法務マニュアルを作成することを推奨しています。
中小企業が行うべき法務の方針
企業法務の内容はこちらのページをご覧ください。
これらすべてを社内で実施するのは困難です。
また、すべてを専門家に依頼することも資金的に不可能でしょう。
そこで、やるべきことと、あきらめて受け入れるべきことを取捨選択します。
次に、社内でできることと、専門家に依頼すべきことに仕分けします。
具体的には、リスクが小さい事柄はあきらめて受け入れる、リスクが大きい事柄は社内で行うという取捨選択をします。
さらに、リスクが特に大きい事柄や、複雑な事柄は専門家に依頼するという仕分けをします。
リスク小 | 受け入れる |
リスク大 | 社内で対応 |
リスク特大・複雑 | 専門家に依頼する |
マニュアル作成の必要性(3Sの実現)
リスクの大小や複雑さの判断にも法的な知識が必要になりますし、その判断にブレがあってはいけません。
また、判断のために大きなリソースを割くわけにもいきません。
そこで、法務面においての3S(標準化、単純化、専門化)を実現できるよう、マニュアルを作成することが必要になります。
これによって、法務コストを下げつつ、適切な法務管理をできるようになります。
作成手順と内容
※ 法務マニュアルの作成自体は知識が必要なので、専門家に相談してください。
1 法的リスクの把握
最初に、自社の事業内容や取引の流れを整理します。
そして、どの場面でどのような法的リスクが存在するかを整理します。
その上で、どのような法務業務が必要かを洗い出します。
2 振り分け基準のマニュアル化
洗い出したリスクを整理した上で、どれくらいまでのリスクであれば受け入れられるかを検討します。
また、社内で対応可能な法務業務の内容も検討します。
その上で、受け入れるもの、社内で対応するもの、専門家に依頼するものを振り分けていきます。
3 処理手順のマニュアル化
最後に、社内で対応するものについては、社内での処理方法をマニュアル化します。
このマニュアル化ができていなければ、すべてを社長が判断することになったり、毎回判断結果が異なるという事態が発生します。
マニュアル例
※ 簡略化したものになります
1 振り分け基準
●円未満の契約 既存のひな形での契約 | 特別な対応不要 |
●円~●円の契約 定型の契約 既存契約の更新 売掛金の未払 | 社内で一時対応 |
●円以上の契約 定形外の契約 | 専門家に依頼 |
2 処理手順
売掛金の未払であれば次のようなマニュアルを作ることになります。
未払発生 | 翌日までに担当者から催促 +社長に報告 |
●日経っても支払なし | 社長名で内容証明による催促 追加の納入の停止 |
●日経っても支払なし +金額が●円以上 | 専門家に依頼 |
実際には、より細かい内容を作成する必要があります。
また、簡単な内容であっても、作成しておくことで予見が可能になり、従業員の不安を軽減できます。