養育費と民法改正

2024年5月17日に、養育費についての民法改正が成立し、2026年までに施行されることになりました。

1 従来の制度

従来の制度では、養育費は父母の取り決めによって決まっていました。
このため、父母の間で養育費を取り決めることなく離婚していた場合に養育費を請求するには、まずは養育費を取り決めるための手続きを行う必要がありました。

また、従来の制度では、先取特権(後述)という優先権は付与されていませんでした。

2 新しい制度

新しい制度では、法定養育費という制度が導入されます。
これは、父母の取り決めがされていなくても、一定額の養育費の請求権が発生するというものです。
これによって、養育費の取り決めの手続きを行うことなく、いきなり養育費請求を行うことが可能になります。

さらに、養育費に先取特権が付与されます。
これによって、養育費を他の債権よりも優先して請求することができます。
例えば、支払義務者が借金だらけであっても、借金よりも先に養育費を支払うように要求できます。

3 調停などの手続を省略して差押をできるようになる

さらに、先取特権という優先権が付与されたことで、調停などの手続きを省略して差押を行うことが可能になります。

従来は、公正証書の作成や調停手続を行っていない場合には、訴訟や調停を経なければ差押を行うことができませんでした。

これが、先取特権を付与されたことで、いきなり差押を行うことが可能になります。
これによって、迅速な養育費の支払請求が可能になります。

従来の流れ

養育費が支払われない
 ↓
調停などで請求
 ↓
数か月の調停手続き
 ↓
調停や審判の結果を使って差押

新制度での流れ

養育費が支払われない
 ↓
先取特権に基づいて差押