金融庁は、金融機関に対して、経営者保証を要求する場合に保証を求める理由や不要とする条件などを明示することを義務付ける方針を発表しました。 経営者保証を減らすことで、起業を促進したり、事業承継を円滑化させることを目的としています。
1 経営者保証とガイドライン
⑴ 経営者保証と目的
中小企業が金融機関から融資を受ける場合には、経営者を連帯保証人にすることが一般的です。
これは、経営者と会社を運命共同体とすることで、経営者が放漫経営を行ったり、会社財産を使い込んだりすることを防ぐことを主な目的としています。
逆に、会社から回収できない場合に経営者から回収するという、保証契約本来の効果には期待していないことが多いでしょう。
一方で、経営者保証は、経営上の投資に消極的にさせて競争力向上を妨げたり、起業や事業の引き受けに消極的にさせている側面があります。
⑵ 経営者保証ガイドライン
このような経営者保証の悪影響を緩和するため、金融庁では経営者保証ガイドラインを定めて、一定の条件の下では経営者保証を求めないように金融機関に要請しています。
具体的には、
法人と経営者が明確に区分・分離
法人のみの資産や収益力で返済が可能
金融機関に対して適時適切に財務情報を開示
という3つの条件を満たす場合には経営者保証を求めないように要請しています。
2 ガイドラインの実情と今回の方針の意味
しかし、実際にはガイドラインに従った運用はされておらず、特に理由なく経営者保証を求められているのが実情です。
今回の金融庁の方針は、金融機関が経営者保証を求める際に理由の説明を行わせることで、理由のない経営者保証の要求を抑止するものといえます。
3 中小企業としての対応
⑴ 「理由説明」に対する対応
金融機関から経営者保証を求める「理由」を開示された場合には、その理由が適切なものであるか、自社の実態に照らして検証する必要があります。
検証の結果、事実誤認がある場合には、それを訂正する必要があります。
また、融資申請の段階から、ガイドラインを意識した融資申請書を作成する必要があります。
⑵ 経営においての対応
経営者としては、経営者保証ガイドラインの要件を満たす経営状況を作り出す必要があります。
特に、事業承継を控えている会社においては、事業承継を円滑に行えるよう、引継ぎ後の経営者が経営者保証なしでの融資を受けられる状況を作り出すことが求められます。